彫刻の歴史とその役割

2023.07.05 彫刻の基礎知識

彫刻とは、三次元空間に制作する視覚芸術であり、造形芸術の一分野です。彫刻は多くの文化で宗教や政治の表現として用いられてきましたが、近代以降は素材や技法が多様化し、抽象的や実験的な作品も現れました。この記事では、各時代における彫刻の役割、彫刻の特徴、主な作品についてまとめました。

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旧石器時代(BC3万年頃～ BC3000年頃)

役割

狩猟や多産・豊穣を祈願するための信仰や儀式に関係すると考えられる。

特徴

動物や人間の形をした小型の石や骨や象牙の彫刻。洞窟の壁に深浮彫りを施したものもある。人類の最古の芸術とされる。

主な作品

ヴィレンドルフのヴィーナス、ラスコーの洞窟壁画

古代エジプト(BC3000年頃～ BC500年頃)

役割

王権や宗教的権威を示すためのものであり、死後の世界への道しるべとしても機能した。

特徴

石や木や金属などで王や神々を記念するモニュメント的な彫刻が多く、正面性や比例性が重視された。色彩も重要な要素である。

主な作品

スフィンクス、ツタンカーメンのマスク

古代メソポタミア(BC2000年頃～ BC500年頃)

役割

神殿や宮殿などに飾られ、神への崇拝や王権の正統性を示すためのものだった。

特徴

石や粘土や金属などで神々や王や動物を力強く表現した浮彫りや丸彫りが多い。文字と組み合わせたものもある。

主な作品

聖樹と牡山羊、ナラム・シンの戦勝碑、有翼人面の牡牛像

古代ギリシャ・ローマ(BC800年頃～ 5世紀頃)

役割

神殿や公共空間に飾られ、神への敬意や人間の美しさや英雄性を讃えるためのものだった。

特徴

人体美や理想化された形象を追求した彫刻が発展し、大理石や青銅が主な素材として用いられた。古典期にはバランスや調和の美が確立された。

主な作品

サモトラケのニケ、ミロのヴィーナス、ラオコーン

中世ヨーロッパ(5世紀頃～ 15世紀頃)

役割

教会や墓地などに飾られ、キリスト教の信仰や教義を伝えるためのものだった。

特徴

木や石や金属などでキリストや聖人や教会関係者を表現した胸像や丸彫りが多い。ゴシック期には浮彫りも発達した。色彩や装飾も重要な要素である。

主な作品

ノートルダム大聖堂の彫刻、クラウス・スリューテル

ルネサンス(15世紀頃～ 16世紀頃)

役割

教会や宮殿や庭園などに飾られ、キリスト教の信仰や人間の美しさや英雄性を讃えるためのものだった。

特徴

大理石や青銅などの素材を用いた丸彫りが主流。古典期ギリシャ・ローマ彫刻の復興を目指し、人体の解剖学的正確さや動きや感情の表現が重視された。

主な作品

ピエタ（ミケランジェロ）、ダヴィデ像（ドナテッロ）

バロック・ロココ(16世紀頃～ 18世紀頃)

役割

教会や宮殿や庭園などに飾られ、キリスト教の信仰や王権の威厳や華麗さを示すためのものだった。

特徴

大理石や木などの素材を用いた丸彫りや浮き彫りが主流。よりドラマティックで感情的な彫刻が生まれた。動きや光と影の効果を強調した。装飾性や色彩性が高まる。

主な作品

聖テレサの法悦（ベルニーニ）、サンスーシ宮殿の彫刻群、ルイ14世像（フランソワ・ジラルドン）

古典主義・ロマン主義(18世紀頃～ 19世紀頃)

役割

教会や宮殿や公共空間などに飾られ、国家や革命の理念や英雄性を讃えるためのものだった。

特徴

大理石や青銅などの素材を用いた丸彫りが主流。優美で繊細な彫刻が生まれた。装飾的で官能的なテーマが多かった。社会的なテーマや民族的な特色が強まる。

主な作品

ポーリーヌ・ボナパルト（カノーヴァ）、自由の女神像（バルトルディ）、フィロポイメーン（ダヴィッド・ダンジェ）

印象派・象徴主義の彫刻(19世紀末頃)

役割

美術館や公共空間などに飾られ、芸術家の個性や感性を表現するためのものだった。

特徴

大理石や青銅などの素材を用いた丸彫りが主流。表面の質感や空気感を表現するために、粗いタッチや凹凸を用いた。形態や空間の変化が試みられる。

主な作品

考える人（ロダン）、アポロンの頭部（アントワーヌ・ブールデル）、14歳の小さな踊り子（ドガ）

キュビスムの彫刻(20世紀初頭)

役割

絵画と彫刻の境界の解消。立体的な構成と平面的な分解。

特徴

金属や木などの素材を用いた寄せ集め彫刻が主流。抽象化や平面化が進み、立体的な形象を幾何学的に分解し、多角的な視点から再構成した。

主な作品

女性の頭（ピカソ）、ギターと男（リプシッツ）

抽象彫刻(20世紀半ば)

役割

形象や対象からの解放。純粋な形態と色彩の表現。

特徴

金属やプラスチックなどの素材を用いた構成物や集合彫刻が主流。形や色や素材そのものの美しさを追求した。幾何学的な形態や有機的な曲線などが用いられた。動きや音や光などの要素が加わることもある。

主な作品

モビール（カルダー）、無限柱（ブランクーシ）

現代彫刻(20世紀半ば～現在)

役割

多様性と実験性の追求。新しい素材や技法の探求。空間や環境との関係性の探求。

特徴

さまざまな素材や技術が開発され、自由で多様な表現が可能になった。既製品や廃品を利用したり、光や音や動きを取り入れたり、場所や環境と関係づけたりするなど、彫刻の概念が拡張された。

主な作品

エンジェル・オブ・ザ・ノース（ゴームリー）、シカゴ・ビーン（カプーア）、INATTENDU（ルオ・リー・ロン）

彫刻は、人類史においてさまざまな目的や主題で制作されてきた芸術形式です。彫刻は、時代や文化によって素材や技法が変化し、表現力も豊かになってきました。彫刻は、人間の精神や感性を映し出すだけでなく、社会や環境にも影響を与える力を持っています。

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