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ダヴィデ像

2023.06.15 ミケランジェロ

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ダヴィデ像

ミケランジェロの「ダヴィデ像」は、ルネサンス期のイタリアで制作された彫刻作品で、聖書に登場する勇敢な少年ダヴィデを表現した作品です。この記事では、像のの制作について解説し、ミケランジェロの芸術への情熱が垣間見えるエピソードなどを紹介します。

ダヴィデ像の制作

「ダヴィデ像」の制作は、フィレンツェ共和国の政治家であるピエロ・ソデリーニの依頼によるものでした。
彼は、フィレンツェ大聖堂の屋根に飾るために、巨大な大理石の塊からダヴィデ像を彫ることをミケランジェロに依頼しました。
しかし、この大理石は元々別の彫刻家によって加工されていたもので、その彫刻家が死去した後に放置されていました。
そのため、この大理石はひび割れや色あせがあり、難しい素材として知られていました。

ミケランジェロは、この挑戦的な素材に対して自信を持って取り組みました。彼は1501年から1504年までの約3年間をかけて、「ダヴィデ像」を完成させました。
彼は自分の作業場を厳重に閉ざし、誰にも見せないようにしていました。彼は自分の作品に非常にこだわりがあり、細部まで丁寧に仕上げることを心がけていました。

ダヴィデ像の特徴的なポーズは、彫刻の中でのバランスを保つために必要な「contrapposto(対立)」と呼ばれる技法を巧みに活用しています。ダヴィデの体重が右足にかかり、左足は軽く浮いている姿勢は、彫刻の重心を安定させつつ、自然な動きと緊張感を与えています。

時代背景と意義

「ダヴィデ像」が制作された時代は、ルネサンス期と呼ばれる文化的な復興が起こっていた時代でした。
この時代には、古代ギリシャやローマの芸術や思想が再評価され、人間の理性や美しさが重視されるようになりました。
また、この時代には、イタリアではフィレンツェやミラノなどの都市国家が台頭し、政治的な権力闘争が激化していました。

「ダヴィデ像」は、このような時代背景を反映した作品と言えます。
まず、「ダヴィデ像」は古典的な裸体像として制作されており、人間の肉体美や筋肉の動きを忠実に表現しています。これは、ルネサンス期における人間中心主義や古典主義の影響を示しています。
また、「ダヴィデ像」は聖書に登場するダヴィデを表現していますが、彼は巨人ゴリアテと戦う前の姿で表現されています。彼は強靭な肉体と冷静な表情で自信満々に立っており、石投げ用の投石器を持っています。
これは、フィレンツェ共和国が強大な敵国に対抗するために必要な勇気や知恵を象徴しています。
ダヴィデは、フィレンツェの市民の自由や独立を守るために戦うシンボルとして表現されています。実際に、「ダヴィデ像」は完成後にフィレンツェ大聖堂ではなく、市庁舎の前に設置されました。これは、フィレンツェの政治的な意思表示として解釈されました。

エピソード

「ダヴィデ像」には、ミケランジェロの芸術への情熱や工夫が垣間見えるエピソードや制作秘話がいくつかあります。

  • 「ダヴィデ像」は、高さ約5.2メートル、重さ約6トンもある巨大な彫刻ですが、ミケランジェロは一人で制作しました。
    彼は自分の作品に誰も手を加えさせないことを条件にしていました。彼は自分の作業場に木製の足場を組み立てて、上から下まで一気に彫っていきました。彼は自分の目だけで大理石の塊からダヴィデ像を引き出すことができました。
  • ダヴィデの頭部や手足が異常に大きく見えることが指摘されることがあります。
    これは、元々屋根に飾るために制作された作品であることを考慮すると理解できます。屋根から見下ろすと、頭部や手足が小さく見えてしまうため、ミケランジェロはそれを補正するために意図的に大きく彫ったのです。また、ダヴィデの左肩にあるひび割れも、元々あった大理石の欠陥を隠すために彫ったものだと言われています。
  • 完成後に市庁舎の前に設置されましたが、その際には大きな問題がありました。
    それは、「ダヴィデ像」があまりにも重くて運ぶことが困難だったことです。当時の技術では、「ダヴィデ像」を運ぶことは危険でした。そこで、フィレンツェの技師たちは、「ダヴィデ像」を木製の台車に乗せて、ロープで引っ張りながら運ぶ方法を考え出しました。しかし、この方法でも「ダヴィデ像」が傾いたり倒れたりする危険性がありました。
    そこで、ミケランジェロ自身が「ダヴィデ像」の横に乗ってバランスを取りながら運ぶことを提案しました。このようにして、「ダヴィデ像」は無事に市庁舎の前に到着しました。

「ダヴィデ像」は、ルネサンス期のイタリアで制作された傑作であり、フィレンツェ共和国の精神や歴史を象徴する作品として今もなお多くの人々に親しまれています。ミケランジェロの芸術への情熱や工夫が見えるエピソードや制作秘話も興味深いものです。

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