no category2009.06.01

その手の中に

最近映画から遠ざかっていた私はいい映画を求めて、映画情報を閲覧していました。
そこでふと目に止まった映画。
『CALLAS ASSOLUTA マリア・カラスの真実』。
この映画はメジャーな映画館ではなく、映画好きが好む芸術作品ばかりを集めた映画館でひっそりと上映されていました。
私は彼女を知らなかったし、この映画館にも足を運んだことがありませんでした。
なのになぜかこの映画にすごく惹かれ、マリアに導かれるように映画館に向かいました。
マリア・カラス

1923年12月2日ニューヨークでギリシャ系移民の子として生まれる。 幼い頃、母に歌の才能を見出されギリシャに移住し、アテネ音楽院に入学。 17歳の時、スッペのオペレッタ《ボッカッチオ》でプロ・デビューを果たし、オペラ歌手としての人生をスタートする。
その卓越した歌唱力と演技力、そして40キロに及ぶダイエットで美しさをも手に入れ、美と才能を兼ね備えたスター歌手として華々しい道を歩む。 数々の恋も話題を呼び、スキャンダルがたえない彼女であったが、海運王・オナシスとの恋が終わった晩年は孤独な日々を送った。
1977年9月16日パリにて没する。
この映画は彼女の壮絶な人生を描いたドキュメンタリーでした。
彼女は20世紀最高の歌姫〈ディーヴァ〉。華やかな名声とスキャンダラスな伝説に彩られたオペラ歌手。歌声の裏の壮絶な人生は、凡百の映画よりも劇的である。
独特の特徴ある声を生かした歌唱は卓越した技術だけでなく、役の内面に深く踏み込んだ表現で際立っていた。
ディーヴァとしての彼女はどこまでも完璧主義で妥協を許さず、真っ直ぐでまじめだった。しかし時にその気性は誤解を招き、人々から彼女を遠ざけ、身勝手で傲慢だと顰蹙を買った。
その非凡なる才能も人々の妬みをかうのに十分すぎた。
しかし彼女はどんな時も毅然としていて、迷いがなく、困難に立ち向かっていく。
そして彼女はオペラ界のディーヴァとして君臨した。
しかしその栄光の陰で、一人の女性マリア・カラスはいつも孤独だった。
映画の中で彼女はインタビューにこう答えている。
『私は普通の弱い女性で、いつも迷い、安堵を求めている』と。
ディーヴァの仮面を脱いだ彼女はごく普通の女性だった。
本当の彼女が求め続けていたものは愛情だったが、ついには手に入らなかった。
彼女はディーヴァとしてしか生きられなかったのかもしれない。
それゆえに、その生き方そのものがオペラのようにドラマチックで今でも人々を魅了して止まないのだろう。
歌に生き、愛に生きたマリア・カラス。

その手の中につかめるものはたった1つなのかもしれない。

2009 06